堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラは嫁ぐという言葉を自分で言って恥ずかしくなってしまった。思わず、両手で顔を覆う。

「では、私の部屋はどちらに?」
 エレオノーラが嫁いできてジルベルトの部屋が変わったというのであれば、その問いは正しい。

「ええと、ジル様のお部屋というよりは、私たちのお部屋、ですかね?」
 エレオノーラの答えはジルベルトの問いに対する答えにはなっていないのだが、その言葉にジルベルトは固まった。

「私たちの部屋、だと?」

「はい。私とジル様は結婚しましたので、同じ部屋で、とお義母さまがおっしゃっておりました。とても素敵な部屋なのです。ここを真っすぐ行ってください」

 エレオノーラが口で案内をする。ジルベルトにはこの部屋の場所に覚えがあった。昔の両親の部屋ではないか。ということは。
 ジルベルトはエレオノーラを抱いたまま、部屋へと入った。

 案の定、寝台は一つだった。

 エレオノーラをゆっくりとソファにおろした。そして、ジルベルトはなぜか部屋を出て行ってしまった。

「ジル様?」
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