堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

4.恥ずかしいです

 ジルベルトの休暇が明けた。ものすごく仕事に行きたくなさそうで、屋敷を出るときに三回ほど振り向いていた。振り向いていただけでなく、何度も妻を抱きしめていた。
 その姿に母親から「女々しいわね。さっさと行きなさい」と一括されてから、やっと職場に向かったという始末。

「あの、お義母さま。私もそろそろ呼び出されておりまして」
 グリフィン公爵の件が落ち着いたからか、エレオノーラにも召集がかかった。ということは、潜入調査の依頼の可能性が高い。もしかしたら、何日かこの屋敷を不在にすることだってあるだろうし、生活も不規則になる恐れもある。
 一応、その件についてはジルベルトの両親に伝えてはあるのだが。

「まあ。あなたもなの? 昨日の今日で身体の方は大丈夫なのかしら?」
 と変な心配をされてしまった。相変わらずジルベルトの母親は鋭い。

「あ、はい。皆さん、忘れていると思うのですが。私も一応、騎士ですので。それなりに体力はあります」
 そう。エレオノーラだって第零騎士団に所属する騎士。主に潜入調査を担当しているが、基本的な訓練はこなしているし、体力だって一般人のそれよりはある。

「あら、そうなのね」
 となぜか義母は嬉しそうだった。その嬉しそうな意味を問い質してはならないと思った。

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