堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

5.話し合いをしました

 その日の夜。
 フランシア子爵家の談話室には総勢たるメンバーが揃っていた。両親の他に、一番上の兄ダニエル。そして、二番目の兄ドミニクと三番目の兄のフレディ。そのメンバーに囲まれているのが、エレオノーラ。もう、このメンバーに囲まれたら縮こまるしかない。

「それでダニエル。リガウン侯爵の話は本当か」
 エレオノーラの父であるフランシア子爵が、顎に手を当てながらゆっくりと口を開いたところだった。

「はい。今のところ、本当だと思われます。本日、次の休暇に挨拶に来たいということで予定の確認がありました。後日、正式に使いが来るものと思われます」
 答えたのは一番上の兄のダニエル。
 ふむう、とフランシア子爵は唸った。願ってもいない話だった。本来であれば諸手を挙げて喜びたいところ。だが、娘は諜報部、さらに言うならば潜入班。

 このフランシア子爵家は代々第零騎士団を勤めあげる家系。父であるフランシア子爵は元諜報部部長、今はその座を長男ダニエルに譲っている。母であるフランシア子爵夫人は広報部に所属していた、つまり過去形。二人の出会いは第零騎士団。次男のドミニクは母と同じく広報部門に所属し、三男のフレディは情報部門に所属している。
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