堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

12.未成年はお断りです(2)

 ここに来れば彼女に会えるだろう、と思っていた。もし会えなかったら、あきらめて帰るのもいいだろう。そのくらいの期待度。会えるかもしれないし、会えなくてもあきらめることができる、というくらいの。
 再びきらびやかな扉を開けて、きらびやかな光の中へ飛び込んだ。そこへ一歩足を踏み入れれば、こちら側とは別な世界へといくことができる。
 そこのきらびやかさは以前と変わりはなかった。酒をたしなむ者もいれば、賭け事に乗じている者もいる。それぞれがそれぞれを楽しんでいるきらびやかな世界。

 彼女はいるのか。ここにいるのか。期待はしていないけれど、やはり期待している自分がいた。顔を大きくゆっくりと横に振って、彼女を探してしまう。ここで働いていると言っていたけれど、いつ働いているのかは知らない。もしかしたら今日は休みかもしれない。
 だけど、そのカウンターで座っている後ろ姿ですぐにわかった。それは間違いなく彼女だった。
 他の客の相手をしているわけではない。ただそこに座って、ゆったりと時間を過ごしているようだ。誰かを待っているのか、客を待っているのか。それとも客の相手を終えたところなのか。

「マリー」
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