堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

7.求婚されました

 ダニエルはジルベルトからの言葉をそのままエレオノーラに伝えた。エレオノーラはエレオノーラのままでいい、と。だからダニエルは、くれぐれも変装しないように、と釘を刺した。
 それを聞いた彼女は悩んだようだが、なぜかパメラが嬉しそうであったため、パメラに任せることにした。

 約束の日は、朝からフランシア家の屋敷中がそわそわしていた。リガウン侯爵家のジルベルトがやって来る。それだけでも一大事であるのに、その目的がエレオノーラとあれば大大大事件だ。

「変じゃないかしら、変じゃないかしら」
 襟元と袖口にフリルのついたシンプルなドレスを身に着けたエレオノーラは、口を開けばそれしか言わなかった。

「ああ、変装は得意なのに、変装しないで人に会うことは苦手だわ」

 エレオノーラは恥ずかしくなって両手で顔を覆う。その隙にパメラがエレオノーラの髪を手早く結う。
「どんな髪型いいですか?」とパメラに聞かれても「変じゃない髪型」としか答えられない。
 パメラは手早く、ドレスに似合う髪型にと編み込んだ。

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