堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 一瞬の沈黙。父親と母親は、顔を見合わせた。
 無言。
 だが、彼らの目は何かを伝えようとしている。

「付き合ってはいないけれど、結婚の申し込みを考えていると?」
 父親の声は少し震えていた。その震えはどのような意味が込められているのか。

 その言葉に返事をするジルベルト。
「はい」

 父親は腕を組んだ。
「最近の若い子たちの事情はよく知らないのだが。その辺の順番はどうなっているんだろうか」

「ジル。あなた、エレオノーラ嬢とは何度かお会いしたことがあるのよね?」
 母親からの問い。

「いえ、その任務で一度きりです」
 それに対する答えはそれ。

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