花笑ふ、消え惑ふ
山崎はしばらくなにも言わず流を見つめていたが、ふいに肩の力を抜いた。
「はは、そーだよね。ごめん変なこと聞いて」
「……いえ」
ぽんぽんと慰めるように肩を叩かれる。
流の力をよく理解しているからこそ、躊躇のない手つきだった。
「涙、やっと止まってくれた」
「あ……すみませんでした、いきなり泣いちゃって」
「それは全然いいんだけど。幹部会が始まるまでにはその赤い目、どうにかしておいてね。おれが泣かしたってバレたら面倒だから」
おもに局長が……という小さなつぶやきの意味はよくわからなかった。
「幹部会?」
「そ。幹部会。なんのために開かれるか…は、言わなくてもわかるね?」
「……わたしの処遇について、ですよね」
「大正解」
「わたし、やっぱり殺されるのかな」
独り言のつもりで呟くと、聞こえていたのか山崎が「いや」と反応した。
「それはないんじゃない?だって言ったんだろ、あの人に。生きたいって。それでいて、見捨てられなかったんだよね」
あの人というのはおそらく土方のことだろう。
そんなことまで知っているんだ、と思いながらも流はうなずいた。