オトメは温和に愛されたい
 あ、でも……。
 その場合には保護者や子供達にもそういうの、説明しなきゃいけなくなるのかぁ〜。

 名前が変わるにしても変わらないにしても、結構大変かも?

 そう思ってはぁって溜め息をついたら、温和(はるまさ)にギュッと抱きしめられた。

「溜め息とか……。音芽(おとめ)、まさかもうマリッジブルーとか言わねぇよな?」

 そんなことはないんだけど……でもそうなる人の気持ち、分からなくもないかも?とか思ったりもして。

「戸籍が変わるのって大変なことなんだね」

 左半身に感じる温和(はるまさ)の温もりにそっとすがるように身を委ねながら、「そんなことないよ」って告げてからそう付け加えたら、「そう言や、名前とか色々変わるのお前ばっかだもんな。ごめんな」って謝られてしまった。

 私はそれにびっくりして思わず温和(はるまさ)の顔を見上げる。

「てっ、手続きは面倒かもしれないけど……私、苗字が変わるの自体は、すっごく嬉しいんだけど……な?」

 だって幼い頃によく妄想したもの。

 もしも温和(はるまさ)のお嫁さんになれたなら、私は「霧島(きりしま)音芽(おとめ)」になるんだなぁって。
 意味もなく紙に「霧島音芽」って書いて照れてみたり。
 恋する女の子ならみんな1度ぐらいはやったことあるんじゃないかな、そういうの。
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