オトメは温和に愛されたい
***

 次に目が覚めるともう朝で、私のすぐ隣で眠っていたはずの温和(はるまさ)の姿はすでになかった。

 代わりに美味しそうなお味噌のにおいが部屋を満たしていて。

 寝ぼけ(まなこ)をこすりながら身体を起こしてから、スリップ1枚なことに気恥ずかしさを覚えた私は布団を抱き寄せるようにして身体を隠す。

 そうしながら視線を転じた先にはキッチンに立つ温和(はるまさ)の姿があって。
 彼、朝ごはんを作ってくれているみたい。

「起きたのか」

 私の視線に気づいたらしい温和が、鍋をゆっくりとかき回しながら優しく微笑みかけてくれる。

「うん、おはよ……」

「お寝坊さん。よだれ垂らして眠ってんのが可愛かったから、寝顔、撮らせてもらったぞ」

 スマホをチラつかせながらニヤリと笑う温和(はるまさ)に、私はブワリと顔が熱くなる。
 慌てて口元に触れてみたけれど、濡れている気配はなくて。
 乾いちゃった?と思ったけれど、ククッと笑われて、からかわれたんだって分かった。

温和(はるまさ)の意地悪っ」

 キッと遠目に温和(はるまさ)を睨んでから……でも、私だって……と胸の内でひとりほくそ笑む。

「腹減っただろ? 朝ご飯(朝めし)もうできるからこっち来いよ」

 まるで新婚さんのように自然の流れでそう言ってくれた温和(はるまさ)に、私、何があっても今日一日頑張れるな、って思ったの。

 でも。
 とりあえずその前に……。

「一旦部屋に戻って、着替えてきても……いい?」



   END(2020/06/12-6/13)
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