オトメは温和に愛されたい
(あ。もしかしたら何か頼み事でもあるのかしら)

 同じ学年を受け持っているうえに、同期のよしみもある。
 私が鶴見(つるみ)先生に助けていただくこともあるし、その逆も然りだ。

 そんなことを思った私は、「これ印刷したら終わりです。なので何かお手伝いが必要なら遠慮なく言ってくださいね?」と問いかける。

 すると鶴見先生が慌てたように顔の前で手をブンブン振って。

( ん? 違った?)

 お手伝いじゃなければなんだろう?
 そう思って鶴見先生を仰ぎ見たら……。

( ちょっ、なんで照れてるのっ)

 そこで私はハッとする。もしかして、恋愛相談!? キャー、だとしたら大好物っ!
 はやる気持ちを抑えながら、顔は努めて平静を装って、鶴見先生の言葉を待つ。

「えっと……もし……今日このあと何も用事がないようでしたら、その……駅前に新しく出来たパンケーキの専門店に一緒に行ってもらえませんか? お礼は……お好きなパンケーキを思う存分おごらせて頂くことと……先生をご自宅まで責任をもって送らせて頂くことぐらいしか出来ないんですが……」

 僕、甘いもの好きなんですけど男一人だと行きづらくて……とおっしゃる鶴見先生に、私はキラキラと目を輝かせる。

「そのお店、めっちゃ気になってました! 是非是非っ!」

 興奮のあまり思わず立ち上がってしまって、膝の痛みに顔をしかめる羽目になる。
 軽くよろけたところを鶴見先生が支えてくださって、私は赤面してしまう。
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