オトメは温和に愛されたい
「――この状況で、そういう発想になれるところがすげぇと思うんだけど……お前、それ、本気(マジ)で言ってる?」

 温和(はるまさ)が私に覆いかぶさるようにして、そう問いかけてくる。

 ああ、間近で見るとやっぱり温和(はるまさ)はハンサムだ。
 怒っている顔もうっとりするぐらいかっこいい。

 今からお仕置きされるのだと頭の片隅では分かっているのに、何故かそれを凌駕(りょうが)するぐらい温和(はるまさ)の顔には脳味噌を麻痺させる効果があるみたいで。

「俺、今からお前に酷いことするって宣言したよな?」

 お仕置きとは聞いたけどそれが酷いことと言うのは初耳ですっ!
 そう思いはするものの、鼻先が触れ合うくらいまで近づいてきた温和(はるまさ)の顔に、私はドキドキして思考が停止する。

 あまりにときめきすぎた私は、そのプレッシャーに耐えられなくてギュッと目をつぶった。

 と――、

「今のお前、すげぇ嫌なニオイがしてるって自覚ある?」

 私の首筋に顔を近づけて、耳元を(かす)めるように温和(はるまさ)がそう吐き捨てて……私はギョッとする。

 いま、私、臭いって言われた……?
 ニュアンスは違うけれど……そういう意味、だよね?

 さすがに女の子として、好きな異性から言われるとめちゃくちゃショックなんですけど。

 今日はあまり動いていないから汗とかかいていないはずだけど……いつも清潔感溢れる温和(はるまさ)からしたら、臭いんだ……。
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