逆プロポーズした恋の顛末


尽の言うことはもっともで、たとえ怪我をしていなくとも、わたしにできることはほとんどないのだと思う。

夕雨子さんと所長のことに首を突っ込めるほど、二人の間に何があったのか知っているわけではないし、夫婦のことは夫婦にしかわからないものだとも思う。

でも、だからといって、ただ見守るだけというのも落ち着かない。
さんざんお世話になった所長のために、何かしたい。


「ねえ、尽。明日、わたしも一緒に行っちゃダメ?」

「一緒に?」

「所長の力になりたいの。所長には、わたしも幸生も言い尽くせないくらいたくさんお世話になったし、わたしたちが、こうして家族として再出発できるのも、所長がいてくれたから。恩返しがしたいのよ」

「その気持ちは、わからなくもない。けどな、ジイさんの後悔はジイさん自身が晴らすしかないんだ。俺たちにできることなんて、ほぼない」

「それでも、背中を押してあげることくらいはできるでしょ?」


苦い表情の尽は、怪我人は安静にしていろと言いたいのだろう。

しかし、じっと見つめるわたしに根負けし、渋々頷いた。


「わかった、連れて行く。ただし、体調次第だからな?」

「大丈夫。無理はしない。所長に、わたしのことまで心配させるわけにはいかないもの。もちろん、幸生も一緒にね?」

「ああ。三人で押しかけてやるか。あの家は……ひとりで過ごすには、広すぎる」


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