逆プロポーズした恋の顛末
ジョージに手伝ってもらいながら立ち上がり、先導するスタッフの後ろへ続く。
チャペルへは、外から庭を通っても行けるが、時間がおしていることもあり、地下の通路を使う。
「こちらを」
「ありがとうございます」
通路の入り口で待っていたスタッフが差し出したのは、夕雨子さんが育てた薔薇で造ったウエディングブーケだ。
濃淡入り混じるピンクを基調としたブーケは、可愛らしさと上品さを合わせ持っていて、見るだけで自然と笑みが浮かぶ。
「ステキなブーケですね。ブーケトス、するんですか?」
わたしの手元を覗き込むようにして、一枚、ブーケだけの写真を撮った偲月さんが訊ねる。
「ううん。あげたい人がいるから、しないわ。式に呼んでいるのも、尽のご家族と友人だけだし」
「あ! そういえば、律さんは、立見先生のお友だち、見たことあります? 二人とも超イケメンですね!」
「超イケメン? 尽の友だちは、午来さんくらいしか知らないんだけど……」
午来さんは醜男ではないが、「超」イケメンでもない。
大学時代の友人はほぼ医師で、急な結婚式に招待しても出席できないだろうと、端から呼んでいない。
お互いに、忙しすぎて疎遠になっていると言っていた、高校時代の友人だろうか。
通路の行き止まりにある階段を上ると、チャペルの前室に出る。
その先、チャペル内部へ続く扉の前には、四年ぶりに見る懐かしい人の姿があった。
「九重会長……」