逆プロポーズした恋の顛末


京子ママのお店で働き出して、三か月が経った頃。
わたしは、微熱や吐き気、めまいなどの原因不明の体調不良に見舞われた。

食欲がなく、体重が減ったせいで貧血になったのだろうと思っていたが、京子ママに連れられて行った病院で、思いがけず「妊娠していますね」と告げられた。

驚きはしたが、心当たりは十分すぎるくらいにあったから、すんなり受け入れられた。

そして、自分でも不思議に思うほど、どうしても産みたいと思った。

京子ママには、相手に知らせなくていいのかと訊かれたが、知らせる必要はないと言い切った。

尽とは三か月も前に別れていたし、子どもが出来たなんて言えば、別れた理由そのものがなくなってしまう。
言えるはずが、なかった。

だから、全部ひとりで決めた。
これからどうやって生きていくか。
自分とお腹の子どものことを考えるだけで、精一杯だった。

それ以外のことは、考えようとしなかった。

もう一度、叶わぬ夢を見たくなるかもしれないのが、怖かったから――。

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