逆プロポーズした恋の顛末
はためくのぼりにある「シロクマソフトクリーム」というのが人気メニューらしい。

いわゆるコーンにその場で絞り出して作るソフトクリームではなくて、シロクマの絵柄がついたカップに入ったもの。
衛生面、子どもが溶けたソフトクリーム塗れになる悲劇などに配慮したものと思われる。
無添加、原材料も新鮮な生乳と生クリームを使用しているようだ。

あとで幸生と食べてみようか、と考えながら、コーヒーを買い、空いている席に座る。

ぼんやりと、行き交う家族連れやカップルを眺め、誰もが楽しそうで、幸せそうだと思う。


(わたしたちも、あんな風に見えていたの……?)


幸生はすっかり尽に心を許しているし、「パパ」だと言っても、すんなり受け入れそうな気がする。

息子に「おにいちゃん先生」と呼ばれるのは、尽にとって喜ばしいことではないだろうし、幸生だって「パパ」と呼んでみたいだろう。

二人の仲を邪魔しているのは自分だけのような気がして、何とも言えない複雑な心地でコーヒーを啜っていると、懐かしい名前で呼ばれた。


「アイさん!」

「……?」


こんなところでホステス時代の知り合いに会うなんて想定外だ。

振り返れば、明らかに周囲とはちがうオーラを放つ親子連れがいた。

シンプルながらもセンスのいい、テイストがおそろいの服を着た夫婦は、そのままモデルが務まりそうな美男美女。
しかも、背の高い「超」がつくほどのイケメンが抱いている女の子がびっくりするくらいカワイイ。

幸生と同じくらいの年頃だろうか。大きな目にぷっくりした唇。やわらかそうな頬。まさに「天使のような」という形容がぴったりだ。

こんな派手な親子の知り合いはいない、と思いかけ、女性がバックパックのショルダーに本格的なカメラを装着しているのを見て、ハッとした。


「もしかして……偲月(しづき)さん?」

「はい! そうです! ご無沙汰してますっ!」


四年前もカメラマンというよりは、自分がモデルになれそうなくらいキレイだった彼女だけれど、あの頃よりも一段とキレイになった笑顔で元気よく答え、キョロキョロと辺りを見回す。


「……おひとり、ですか?」

「ううん。息子と……尽――立見先生と来てるの。いま、二人は両生爬虫類館にいるわ」

「あの、京子ママに立見先生とのこと、勝手に話してしまって、すみませんでした。わたし、アイさんにモデルをしてもらったお礼もしていないのに、恩を仇で返すようなことしてしまったんじゃないかって……」

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