僕は、空の上から君を見守る
「おい!お前ら!!」
ビスルが叩き起こすように船員達の頬を叩く。
「、、、ん、、、どうしたんです?」
「あれ??俺たち、、、」
雨も止み、波も落ち着き、
静かになった船は
船着き場に着いていた。
男達は身を起こす。
「、、、ここって、、、」
見慣れた船着き場。
ビスルの脇には泣きじゃくるブルーの姿。
「奇跡が起きたんだ。」


あの時、、
男達の船が大海原へ消えていく。
そんな姿を見ていたルーホー。
「あわ、、あわ、、どうしよう。」
焦るが何も出来ない事は知っていた。
真面目なルーホーは
人一倍規則などには従ってきた。
でも、、、
「このままじゃ、、、ブルーのお父さんが、、、」
この大海原に放り出されたマストがない船の
結末は目に見えていた。
「ブルーが、、、悲しむ、、、。」
ルーホーの脳裏には今までで見てきたブルーの姿が浮かぶ。
「ブルーは、、、優しい子なんだ、、、
頑張って働いて、それでも楽しそうで、、、」
ルーホーは涙ぐみながら拳を握る。
「ブルーの笑顔は、、、港町のみんなを笑顔にするんだ、、、」
ブルーの笑顔を思い出す度に
突きつけられた現実が胸に刺さる。
「、、、ブルーはお母さんが居ないんだ、、、」
男手一つで育てられたブルーには
この現実は非情だった。
ルーホーは涙を拭うと決意を固めた。
「僕は!!ブルーの笑顔が見ていたい!!」


大海原で漂う船。
力尽き、意識を失う船員達。
「、、、ん?」
その中でビスル一人が船の異変に気づく。
荒れ狂う海。
吹き荒れる風。
その流れに逆らうかのように
マストの折れた船は
一直線に海を走る。
「!!何だ!この風は!!」


こうして無事街の漁港までたどり着いた。
街を襲う嵐も
すっかり収まってきて。
「、、俺たちは、神の風に救われたんだ、、、」




翌日、、、。
雲の上は大パニック!
「おい!どういう事だ!!」
世界の風を管理しているモニターに
次々映し出される映像。
「エジプトで大雪!?」
「ロシアが歴史的猛暑!?」
「日本に巨大ハリケーン!?」
次々と発生する異常気象。
「昨日何があった!!?」
この情報は世界各地の風職人の元へ送られた。
、、、そして浮上した原因。


ルーホーの元へ風警察がやってくる。
「ルーホー!お前を"気象取扱者禁止法違反"で
逮捕する!!」
ルーホーがあの時、ビスルの船へと風の流れを作った事で
気圧が急激に変化し
世界のバランスを崩し、この異常気象を起した。
「世界を狂わせた!お前は大罪人だ!!極刑は免れないと思え!!」
こうしてルーホーは
風の牢獄に幽閉される事となった。




風の刑務所"パンデモニウム"。
空の世界の各地の罪人達が全てここに
捕らえられる。
建物を覆う成層圏まで続く巨大な竜巻の
完全なる隔離。
それを突きつけられ収監される瞬間に
罪人達の心を折る。
ルーホーはその最深部。
最も罪の重い者が入れられる牢獄に
幽閉された。

コンクリートのような冷たい床、壁。
無機質な鉄の棒で仕切られた
その部屋はまるで
動物を閉じ込めているかのよう。
「おい!看守さんよ〜!」
囚人が少しでも声をあげれば
「静かにしろ!!!」
看守から罵声が飛ぶ。
静まり返った周りからは
動物のような唸る声と
塀をカリカリ削るような音が聞こえてくる。
ルーホーはそんな気が狂うような
監獄の雰囲気と罪の意識で頭を抱え、
押しつぶされそうに
しゃがみこんだ。


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