僕は、空の上から君を見守る
「、、、」
そんな牢の中、未だ
隠れるように身を潜めるルーホー。
「おい!そろそろいいか?」
ヒソヒソ声で話す隣の牢のウォルスも
隠れるように身を潜める。
とはいえ、何もない牢。
身を潜めるような場所もなく、
ただ、小さくまるまっているだけのルーホーは
はたからみたら丸見え。
隣の牢のウォルスも似たようなものだ。
それでも看守は二人を見つける事が出来ず
あたかも牢の中はもぬけの殻。
 

《蜃気楼現象》
気圧の違う空気、
冷たい空気が温かい空気へ向かうとき
その流れで光の屈折が変わり
見えないものが見えるような現象。


浮島現象と言われるこの現象は
水平線の下にある見えない島を浮き上がらせる。
ルーホーはお湯の蒸気で牢の上部の空気を
急激に温め、
冷たい床をさらに空気で冷やし
上部と下部との温度差を作り出した。
それによってルーホーの牢の床の像が
モヤモヤ〜っと浮かび上がり
床も壁もコンクリートのような牢は
床を映し出しているにも関わらず
壁に何もないように見えせた。
自然界でも稀にしかおきない現象だが
風を扱うプロフェッショナルなルーホーだからこそ
知識とテクニックで作り上げる事が出来た。

「なら、そろそろ行こうか。」
ルーホーは予め冷やして凍らせておいたハンドタオルを手に持ち、看守が開けてくれた牢を出て
"無間"から上の階層へ続く階段の横の壁に身を潜める。
ウォルスも続いてルーホーの反対側の壁に身を潜めると静かにその時を待つ。

「おい!ホントに居ないのか!?」
上の階から看守が数名"無間"に降りてくる。
「ホントですよ!確かに確認しましたが
牢の中には誰も、、、。」
そう、階段を降り、入口に入る。
その背後から!
「おりゃ!」
ウォルスは手刀で
「えい!」
ルーホーは固まったハンドタオルで
看守を殴打。気絶させる。
「さぁここからがスピード勝負だぜ。」
そう言って看守を蜃気楼の中に隠す。
「蜃気楼が消える前に、脱出するぞ!」
蜃気楼現象はそう長く続くものではない。
だからこそ、ルーホーは
固めたハンドタオルの棒をワザワザ倒し
音を出し
看守に蜃気楼の完成を早めに知らせる
必要があった。


「そんで次は『看守の目をどう掻い潜るか』。」



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