赤い雫のワルツ




 ご主人様は仕返しと言わんばかりに、いきなり起き上がったかと思えば、私の上に体を預けてくる。



「私をからかった罰、だからな……」



 そういう割には声が震えていて、視線を泳がせている。



 ご主人様、ヘタレまだ全然治る気配無さそうですね。



 仕方ないと、私はご主人様の首に腕を回して、ご主人様の姿勢を崩す。



「うわっ!」


「キスをするのには、あの距離は遠すぎます。こうやって顔を近づけなければ――」


「まったく……貪欲な君の勝ちだ!」




 私の勢いに負けたご主人様は、そっと微笑みながらキスを落とした。


 そのキスにはもう何の迷いもなく、ただ私のことを愛していると、そう伝える優しいキス。



 吸血鬼のキスはこんなにも優しくて、少しだけ臆病なんて事……それは私にしか知らないこと。





 吸血鬼に使える、メイドの私にしかこの幸せは知らない事なのだから。

 



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