そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！　謹んでお断り申し上げます！〜
　俺は、かつてはほぼ「ペット感覚」でしか見ていなかったはずの食い意地の張った女の子のことを、どうしても「異性として」そばに置きたいと思ってしまった。

　その激情のまま村陰(むらかげ)さんに、「どうせ面倒を見るのなら、いっそ許嫁(いいなずけ)として手助けしたい」と言ったら、驚かれたっけ。

　まぁ、そりゃそうか。自分自身でも自覚できるくらいいきなりの提案過ぎたしね。


　村陰さんからは許嫁云々(うんぬん)については娘の意思を尊重すると言う条件を出されたけれど、それとは関係なく住む家がなくなるのなら、ひとまずうちに引き取るってことだけは承諾してもらったんだ。

　最初は難色を示した村陰さんも、とても広い屋敷であること。
　そこへ俺が一人で暮らしているわけじゃなく、使用人も同居していることを告げたら「それならば」と、案外すんなりアパートの鍵を渡してくれた。


　俺は幼い頃から望んだものが手に入らなかったことなんて殆どなかったから……花々里(かがり)のことも、そうやって外堀から埋めていけば簡単に手に入れられると思っていたんだ。


　実際、途中までは割と思惑通りにことが運んでいたしね。


　なのに――。
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