そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 世の中には「うなぎ専門店」なんて素敵なものが存在しているのを私、生まれて18年も知らずに過ごしてきました!

 うなぎって……パック詰めされてスーパーに並んでるんじゃないの?
 うちでは年に1度か2度、お母さんのお給料日にそれを買って帰って、熱々のどんぶりご飯に載せて「いただきます!」をするのが一大イベントなんだけどな?
 タレとか添付のじゃ少なくて心許ないから、家でお母さんが追加の追いダレを作ってくれて。
 それをたらりと掛けて汁だくにしたら、うなぎ風味の甘辛いご飯がたくさん食べられるのっ♥

 あーん、幸せっ!!

 ってそうじゃなくて!

「お、お、お……」

「お?」

「お重に入ったうな重なんてテレビ番組以外で見たの、私生まれて初めてですっ! あれって撮影用に見栄えよく作られた絵空事の世界じゃなかったんですね!?」

 見たこともないような高級そうなお店の個室。
 御神本(みきもと)さんと対面で座って、目の前に置かれたお重のふたを開けた感動そのままに勢いこんで言ったら、キョトンとされてしまった。

「逆にうな()が重箱以外で何に入ってるんだ?」

 え!?
 言われてみれば確かに「うな重」っていうと重箱以外ないですね?

 じゃあ私がいつも食べているのは――。

「あー、そう、私の知ってるうなぎは“うな丼”です! パック入りのうなぎを買ってきて、どんぶりによそった熱々ご飯の上にのっけるんです。御神本(みきもと)さん、もしかして知らないんですか? うな丼!」
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