そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「予約はね、取ってあるんだ」


 ここは一般の和風建築のご家庭ではないですか?という雰囲気。

 植え込みの間を縫うような小道に、白くきらきら輝く玉砂利(たまじゃり)がまかれていて、その中をまるでここを通って行くいんだよ、と教えるように木曽石――花崗岩(かこうがん)――の丸っこい飛び石が伸びる。

 頼綱(よりつな)の家の、長い長い石畳の通路とはまた違った風情(ふぜい)で、規模が小ぢんまりしている分、どこか(ひな)びていて(おもむき)深いようにすら感じられて。

 今は昼間だから付いていないけれど、道のそこここに配置された小さな灯籠(とうろう)型ガーデンライトは、暗くなってきたら通路を照らす道しるべになってくれるんだろう。


 その飛び石の道を、頼綱について恐る恐る渡って行く。



 本当にここ、お店……なのかなぁ?
 どう見ても一般のお宅にしか見えない。


 不用意に付いて行ったら、家の中から和装美人な頼綱(よりつな)の彼女とかが出てきて「あらヨリさん、ご飯食べに来てくれたの? 入って、入って♥」とか……そんなことにならないかしら。


 三文芝居のようなチープな絵面(えづら)が思い浮かんで、思わず足が止まってしまう。



 だって、もしそんなことになったら、そこに()()()()付いていって居合わせた私は、とんだ道化役(どうけやく)だもの。
< 191 / 632 >

この作品をシェア

pagetop