そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「ただいま戻りました」

 お母さんと2人の家になら、「ただいまぁー」と間延びした声で帰宅するのだけれど、居候(いそうろう)生活3日目の現状ではさすがにそれは(はばか)られて。

 これを、「気を遣っている」と見るか、「様子見しているだけ」と見るかは微妙なところなんだろうな。

 予期せずお母さんに会ったことで、少し弱気になっている自分に気がついて、私はフルフルと首を振った。

 病院でお母さんに即答したように、別に私、御神本(みきもと)家で肩身の狭い思いなんてしていないし、もちろん(しいた)げられてもいない。

 ばかりか、むしろとても大事にされているという気までするくらいで……ホント不満なんてないの。

 何より食事が美味しいし、旬のものを必ず一品は取り入れるようにして料理を作る八千代さんの姿勢は、大いに見習いたいとも思う。
 御神本(みきもと)家にいると、食事ってお腹が膨らめばいいってだけのものじゃないんだなって痛感するの。


 そんな私が、ただひとつ困っていることがあるとすれば、頼綱(よりつな)とひとつ屋根の下で寝食をともにしているということ、かな――。

 昨夜も嘘か冗談か、「今夜こそは」と同衾(どうきん)を迫る頼綱を部屋から追い出すのに苦労したし、多分今夜も。
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