そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 キスで有耶無耶になってしまった婚姻届の件もあるから、彼とこのまま手が切れるのはまずいとは思う。けれど……お母さんと知り合いならきっと、お母さん(づて)で何とか連絡は取れると思うし。
 今すぐどうこうこちらが動かなくても大丈夫……だと、思う……。

 あんなに散々私のことを振り回しておいて、そう言えば彼自身、私の連絡先(ケータイ番号)とか聞いてこようとしないし。

 あ、もしかして貧乏だから持ってないと思われているのかも?

 だとしたら少し心外だ。

 確かに通信費は痛いけれど……携帯がないといざって時にお母さんと連絡取れないもん。
 自宅には固定電話なんて引っ張っていないし、携帯がなくなったら色々困るから。

 もちろんスマホみたいな通信費が高くつきそうなのは無理だから通話だけを重視して、いわゆるガラケーというやつを愛用しているけれど。
 これだって結構な文字数のショートメッセージぐらいなら出来るから案外不便はないの。

 そんなことを考えながら窓外を流れていく街並み――もうすっかり暗くなってしまった――をぼんやり眺めていたら、不意に声をかけられた。


「――少し寄り道しても構わないか?」
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