そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 そんなことをふと考えながら、無意識にじっと御神本(みきもと)さんを見つめてしまって。「何だ、花々里(かがり)。もしかして寂しかったのか?」とか聞かれてしまった。

 さ、寂しっ!?……いわけないじゃないですかっ!
 どうやったらそんなおめでたい思考回路になれるんでしょうね?

 思いながらフィッとそっぽを向いたら、「まだ口をきかないつもりか? なぁ、コレやるから機嫌直せよ」とか。

 コレ。
 分かってます。

 〝飴玉〟ですよね!? さっき店員さんに飴のコーナーに連れて行ってもらってるの、私、一部始終見てました。

 わざわざ寄り道してまで買ってくれるとか。

 この人、私のことをどれだけお子ちゃまだと思ってるんでしょうね?

「で、花々里は右と左、どっちがいい?」

 2種類も買ったんですか。お金持ちは違いますねっ。

 彼が片手ずつにささげ持った、ピンク系統と黄色系統のパッケージを横目に見てそう思う。

 思いながら、ムスッとした声音で「左……っ」と――。「ピンク色の方がいいのだ」と答えてしまう私って一体。


***


「はい、どうぞ」

 ガサガサとパッケージを開ける乾いた音を聞きながら、何となくそっちを見るのがはばかられてうつむいていたら、再度促すように「どうぞ」と声をかけられた。

 その声に顔を上げたら……。
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