そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 結局私、あのあと黄色いパッケージの方――レモン味――の飴も頂いて、いま口に含んでいるところです。
 あ、レモン味のときはさすがに唇、死守しましたよ?
 口移し、断固拒否! 桃味だけで十分なので!って力説したら、御神本(みきもと)さんってば嬉しそうに「そうか、桃で満足したか」って言って。多分それ、分析間違ってるからね!?

 コロコロと飴玉を口の中で転がしながら、1日のうちに1度ならず2度までも唇を奪われてしまうなんて!と頭はフル回転。
 考えすぎて、腹いせみたいにガリガリと飴玉を噛み砕いてから、もったいないことをしてしまった、と思ったけれど後の祭り。
 飴とか食べるの久々だったし、もっと味わいたかったのにっ。

 もう1個ずつ欲しいって言ったら、呆れられるかな。でもまだ一袋ずつほぼ丸々残ってるし。
 独り占めしたら虫歯になりますよ?って脅したらいけるかな。

 そんなことを思っていたら、
「着いたぞ」
 と言われて。
 窓外に視線を転じると、薄暗すぎてよく見えなくて。
 フロント側にぽっかり四角く、見慣れない外の景色が見えた。
 この閉鎖的な感じ。きっとどこかの屋根付きガレージか何かに入ったに違いないの。

 当たり前だけどうちのおんぼろアパートにはそんなのなかったはずよ?
 だからって、どこか近場の立駐に入ったという感じでもないし。

 なにこれ、なにこれ? 私、飴に夢中になってる間にどこに(さら)われたの!?
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