そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「さて花々里(かがり)。謝罪の代わりに、()からキミに何らかの要求を突き付けても構わないよね?」


 簀巻(すま)きにされた――実際には自分でやったんだけど――状態のまま、何とか彼の手中から逃れようとクネクネと(もだ)える私に、頼綱(よりつな)がこれ以上ないくらいににっこりと微笑みかけてきた。

 ひぃー!
 その笑顔、「僕」口調でされるとめちゃくちゃ怖いですっ!!


「な、な、な、何をっ」

 私は今からご主人様にどんなひどい折檻(せっかん)をされるのでしょうか!?


 不測の事態に備えて何とか手だけでも出したいのに、頼綱はそれを許さないみたいに、毛布ごと私の身体をぎゅっと抱きしめてきて。

 それはまるで「逃がさないよ?」と圧を掛けられているようで、ますます怖い。



「ねぇ花々里。うちに居候(いそうろう)しているとか、俺に雇われている身だとか、そういうのを全て抜きにして正直に答えて欲しいんだけど」

 いいね?と視線だけで念押しされて、私は蛇に睨まれた蛙みたいに射すくめられてしまう。


 頼綱、何てかっこいいんだろう。

 オールバックでバッチリ髪の毛を整えている頼綱も隙がなくて見栄えがするけれど、今みたいに無造作に下ろし髪にしている彼は堪らなく色気があって素敵だ。

 そんな整った顔で、前髪越し、真剣に私の顔を見つめてくるなんて……ずるい。

 私、その目には逆らえそうにないよ。


 観念したように小さくうなずくと、途端、頼綱が何故か緊張したように居住まいを正した。
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