そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 何はともあれ。
 もう! 閉めるなら閉めるって声くらいかけてくださいよ!
 怖かったのよ!?

 なんて言う私の心の叫びなんてどこ吹く風。
 御神本(みきもと)さんはツカツカと私の横に来ると、
「こっちだ」
 
 何が何やら分からないままの私の手を引いて、ガレージ横の小さな扉を開けた。

 操作パネルなんていじらなくても出入り口、別にあったのね。

 良かった!
 外に出られたー!

 そう思ったのも束の間、出た先が大きな庭付きの日本家屋へのアプローチ――玉砂利に、車が余裕で通れそうな幅広の石畳みの道――じゃあ、戸惑うなって言う方が無理だよね?
 道の両サイドを囲ってるの、何? 竹垣?

 所々に設けられた和風のガーデンライトに照らされて、ものすごく趣のある風情。
 薄暗くてよく見えないけれど、ここを抜けた先のあの黒々とした地面の辺りには多分池とかあって、高級そうな錦鯉が優雅に泳いでるに違いないのよっ。
 だって、ゆるっとしたアーチ型の橋が架かってるシルエットがくっきり見えるし!

 その向こうにお寺か何かかしら?と見間違うような大きさの……でも和モダンでござーいと言った雰囲気の、平家が見えた。

 中に人がいるのかな?

 電気がついていて、そこかしこから障子越しの、淡く黄色みがかった仄かな明かりが漏れている。

「あ、の……ここ……。どこですか?」

 思わず立ち止まって、あたりをキョロキョロと見回しながら言ったら、
()()()()家に決まってるだろう?」
 とかっ。

 私は一瞬耳を疑った。

「い、ま……俺たちの、とか()()()()()()ませんでしたか?」

 驚きのあまり言葉遣いが悪くなってしまいました。
 反省ですっ。
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