そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 あ、やばいっ。
 また()()

 振り返りざま、椅子の背もたれをギュッと握って手指に力を込めながら、

「よ、りつ、なっ、そ……このラッ、プ、切っ、てくれる?」

 私たちの迫力に押されて呆然と立ち尽くす頼綱(よりつな)に、痛みでフルフル震える指でラップの細長い箱を指し示したら、頼綱が慌てて動いて。

 そうしてラップの箱を手に、「どっ、どのくらい?」とか。

 ――頼綱さん、まさかそれ、切る長さを聞いていらっしゃいます?

 一口サイズの手毬(てまり)おむすびを作りたいので、「20セ、ンチくら、いっ」と声を絞り出すように言ったら、頼綱ってば、私の様子にオロオロしてか、今度はなかなかラップの端が掴めなくて()()()()するの。


「お貸しくださいまし」

 とうとう見かねたらしい八千代さんに、ラップを箱ごと奪われてしまった。


 結局、一口サイズの(うなぎ)乗せ手毬(てまり)おむすびは、痛みの合間を縫うようにして頑張った私と、始終テキパキと動く八千代さん2人()()の共同作業で完成してしまいました。
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