そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 すかさずギュッと小さな身体を抱きしめると、俺は当初の計画通り彼女の唇を奪った。

「ん、……んっ!」

 驚いて逃げようとする花々里の後頭部を押さえて、さらに一層口付けの角度を深くする。

 様子を見ながら彼女の唇に舌を這わせると、やり過ぎたかな。
 途端、花々里にドンッと強めに胸元を叩かれた。


 ――今日はここらが潮時、かな。

 そう思って唇を離すと、すぐさま
 
「ほ、ほっぺじゃないじゃないっ! 頼綱(よりつな)の嘘つき! 超過分、美味しいもので返してっ!」

 唇に手を当てて、花々里が涙目で睨みつけてくるんだ。


 そんな花々里にクスッと笑って「了解」と告げると、俺はくるりと(きびす)を返して彼女には見えないところで笑みを深める。


 花々里はきっと、そんな俺の背中をあの大きくてウルウルの、まつ毛バシバシの目で睨みつけていることだろう。


 さて、次は何を理由に花々里に触れようかな。

 タラの芽が終わったら次はフキだよね。

 色々思いを巡らせると、今まではそれほど興味のなかったあれこれの旬の食材たちが、これまで感じたことがないくらい魅力的に思えてきた。


 花々里が我が家に来てくれて、俺の世界は色鮮やかになった気がする。


 花々里となら、きっとインスタントラーメンだってご馳走になるだろう。

 そんなことを思った。



    END(2021/04/10-4/27)
< 609 / 632 >

この作品をシェア

pagetop