そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「さっき、御神本(みきもと)さんにも言ったんですが、結婚のお話は保留していただくことになりました。なので私、若奥様なんて大層なものじゃありません。本当はすぐさまお(いとま)したいところなんですが、お恥ずかしい話、住むところがないのでしばらくこちらでご厄介になることになりました。――でも! タダ飯ほど怖いものはないとここ数時間で嫌というほど学びましたのでっ!」

 私がそこまで言ったところで、御神本(みきもと)さんがやって来て、「だから頼綱(よりつな)と呼んでくれとあれほど――」と眉根を寄せる。

 そうして何を思ったのか、八千代さんの手を握ったままの私の手を、八千代さんの手ごとすっぽり包み込むように握ってくるの。

 ひぃーーーっ。
 やっぱりこの人は宇宙人ですっ。
 行動が謎すぎて予測不能ですっ!

「みっ、」
 きもとさん、と言いかけたらそのままジロリと睨まれて。
 八千代さんからも、「早くこの人をどうにかしてください」的な視線を向けられる。

 私は小さく吐息を吐いて「よ、り……つなっ、今の話、聞こえてました、よね?」と言い募ってみた。

 まさか私が〝御神本(みきもと)さん呼び〟したところだけしか聞こえてませんよ、とか都合のいいこと言わないよね?

「タダ飯云々(うんぬん)のくだりだったら聞こえたけどね」

 諦めたように溜め息まじりにそう言われて、ついでみたいに手を解放された。

「はい、そのくだりです」

 私は御神本(みきもと)さんと八千代さんふたりが見渡せるように立ち位置を変えると、

「住み込みの家政婦さんとしてここに置いてください!」

 そう、言い放った。
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