そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「ああ、花々里(かがり)っ! ここでひき肉の心配とか! そんなに〝たけのこの鶏そぼろあん〟が食べたかったの? キミのそういうところ! 本当、最ッ高に可愛いよっ! ――大好きだ!」

 なんか、今の八千代さんとのズレまくりなやり取りを気に入られてしまったみたい!?

 だとしたら、みき、……よ、頼綱(よりつな)も大概感覚おかしいですよ!?

「いやっ、あのっ。そ、そういうのっ、正直いま、どうでもよくて……! それより何より私、手をっ! 手を離して欲しいんですっ!」

 やたら感極まった様子の(より)……(つな)……から、しれっと「大好きだ!」とか小っ恥ずかしい告白を受けた気がしなくもないけれど、この際スパーンとみんな「どうでもいい」ことに入れ込んで流してしまえっ!

 そわそわしながら、腕の中で必死に彼を見上げてみるけれど、この人にはそういうのは通じないんだった。

 さっきの呼び名に関しての察しのよさから考えると、わざと知らんぷりを決め込んでいるんじゃないかと言う疑惑もあるのだけれど。

「け、結婚の、お話……はとりあえずっ、ほ、保留になったはずですっ」

 なのでこういうのは……。

 そう続けたいのに、とても大事なものを扱うみたいに優しくギュッと力を込め直されて、何だか言えなくなってしまう。

 だんだん心臓もバクバクしてくるし。なにこれ、ホント、よろしくない兆候です……よ?
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