そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「着替えはすぐに出せそうかい?」

 にっこり微笑まれて、私は「ひっ」とカエルの潰れたような声を出す。

「あ、あのっ、さっきの〝ん……〟は、〝はい〟ではないので、その、このまま一緒に……はさすがに承服できませんっ!」

 苦し紛れにそう言ったらクスッと笑われた。

()()()主人(あるじ)の背中を流すのはよくあることだよ? 知らないのかい?」

 至極当然みたいにそう言い切られて、私は自分が世間知らずなだけなの!?とドキドキする。

 そこで追い討ちをかけるみたいに、くだんの()()()()から「そうそう。時に職名なんだけどね、家政婦というのは()()()家事代行人のことを言うんだよ。花々里(かがり)や八千代さんのように()()()()()そういうことをする人のことはメイドと呼ぶのが一般的だ。だからキミと八千代さんはメイドさんだね」とかどうでもいいうんちくを聞かされてますます混乱する。

 おまけにメイドさん、という言葉に「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ〜♥」とにこやかに微笑む可愛いメイド服の女の子が思い浮かんできてソワソワしてしまった。
 メイドさんとか何だか響きがエッチな感じがするので家政婦さんの方がっ!とか言いたくなったのは、やはり私が俗世の変な知識に毒されてるからですか?

 私もあのひらひらフリフリの服、着せられたりしませんよね?

 八千代さんは和装に白の割烹着(かっぽうぎ)だった。私も普段着にシンプルなエプロンとかでいい。いや、むしろシンプルなフリルなしエプロンとか()いいっ!
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