そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

「ひゃっ!」

 そんな無防備な私を、背後からいきなりギュッと抱きしめてくるとか!

 な、な、な、な……何の嫌がらせですか!?

 シフォン素材のブラウス越しに感じる、割としっかりとしたぬくもり。

 こ、これはもしかして()()()()()、上、すでに裸だったりしますっ!?とソワソワする。


「ごめんね。照れて固まった後ろ姿があんまり可愛かったからつい」

 ()()じゃないわよ、エッチ!

 まるでその様を楽しむ様にククッと喉の奥で笑いをもらしながら、
「けど、下はまだ履いてるから安心して?」
 と私の耳元。耳朶に息を吹き込むみたいに低い声音でポツンとつぶやかれて、私は思わずビクッと跳ねた。
「まっ、」
 思わず真っ赤になりながら……。

「ま?」
 繰り返されるのほほんとした彼のおうむ返しに憤りを覚えた私は、半ばキレ気味に叫ぶ。

「真っ裸だったら訴えてますっ! この、バカ頼綱(よりつな)ぁーっ!」


 初めて――。そう、本当に初めて!

 美味しいものはたんとくれるけれど、まったくもって食えないこの男のことを、アッサリと「頼綱」って呼ぶことが出来た。

 〝バカ〟はついていたけれど。

 でもおかげで「頼綱」呼びの自信がつきました!
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