そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 びっくりするぐらいだだっ広いお風呂場は、床がダークグレイの石畳のように見えたけれど素足で触れてみるとほんのり温かく感じられて。

 磁気タイルという素材の特性なんだと、タオル1枚で腰回りを隠しただけのハレンチ頼綱(よりつな)に言われた。

 彼の思いのほか男らしくて広い背中から慌てて視線をそらせると、洗い場の先の浴槽を見る。


 バスタブは円形の黒っぽい陶器製。

 勝手にヒノキとかの長方形のプールみたいなのを想像していたから、思ったほど大きくないって思ったんだけど、それでも180センチも直径のある、信楽焼(しがらきやき)のつぼ風呂なのだと頼綱(よりつな)から説明されて溜め息が漏れる。


 私がお母さんと住んでいたアパートの浴槽は、足なんて伸ばせっこない小さな1人用バスだったのに、何たる贅沢!

 身長155センチの私なんて、この浴槽の中で真っ直ぐになって寝そべることもできるってことだもの。

 まぁ、お風呂でそんなことしたら溺死しちゃうけど。
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