再会した初恋の相手は王様でした!~逃げたい大統領令嬢は若き王様に溺愛される~
プロローグ

いい加減な自由研究

 アリアは光の王国の美姫と称された母親に似て、愛くるしい容姿を持っていた。天空族の王国の血を引く証である金糸の髪とパッカード家の証である水色の澄んだ双眸の妖精のように清楚で愛くるしい容貌。

 だが、アリアはそれ以外はごく普通の子だった。明るくて元気で前向きな性格で両親に溺愛されて育った。しかし、彼女は自覚している。自分は何でも器用にこなせるが、人を使う側には向いていない、と。成績は上の下、魔法は光魔法も上級の魔法を使えるがこれも可もなく不可もなく。謂わば何事もこなせるが、自分は人を惹きつける力がない。見た目も性格もいいのだが、彼女には人を使う側に必要な人を魅了する力がなかった。

 初の女性大統領を目指せと父に勉強を強制されたが、彼女はいつも人生とは適当だと齢12歳にして悟ってしまった。何でもこなせて見た目も性格も身分も備わってしまっている彼女は、人生とはイージーだと悟ってしまったのである。

 それが良く出たのが、この夏休みの自由研究だ。アリアは、天空界で随一の教育機関の国立シルフィード大学の中等部に通っている。アリアは、学校の夏の自由研究で『ウィル神聖王国について』と書いたのである。中学の夏休みの宿題と塾の夏期講習は真面目にこなし、自由研究は図書館で資料を丸写しにすればいいやと高を括っていた。

 しかし、父のノア=パッカード大統領は見抜いていた。娘の適当なイージーな性格を。ここでその性根を叩き直さねばと父は交流のあったウィル神聖王国のウィル王に頼んでアリアを夏中、ウィル神聖王国の王城に放り込むことにしたのだ。

 そこでアリアは、一人の少年と知り合う、彼との出逢いがアリアの人生を変えることになるとは、その時のアリアですら知らなかったのである。
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