政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
朱加里がごちゃごちゃ言ってるのを無視して、腕を掴み、マンションの中に入った。
もう追いかけてこれない。
後は樫村がなんとかするだろう。

「どっちの味方だ」

「味方って……紗耶香さん、どうして泣いていたんですか?」

「朱加里に財産も俺も奪われた、と言っていた」

「そんなつもりは……」

目に見えて狼狽(ろうばい)していた。
それがいっそう気に入らない。

「そんなつもりはないって?それじゃあ、手放す?」

「私に身の危険がなくなるというのなら、それでもかまいません」

「俺も?」

びく、と朱加里が怯えていた。

「簡単に捨てれるんだな」

捨てさせるものか―――俺は捨てない。
白河の血は強欲で性格が悪いのだ。
井垣会長には感謝しないと。
こんなに手に入れたいと思えるものを与えてくれたのだから。

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