政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「まあ、そうなの。私、エスカレーター式の学校だから、よそを知らないの」

「そうですか」

「あら。朱加里は自転車なの?私だけ車通学なんて心苦しいわ」

「大丈夫です。自転車通学にはなれていますから」

「そう。それじゃあ、お先に」

沙耶香さんは微笑み、車に乗るとドアを閉めた。
昨日の運転手さんと同じ人なのか、私を見て軽く会釈し、運転席に乗った。
私に申し訳なく思う必要はない。
私が黒塗りの車で登校したら、学校中が大騒ぎになる。
制服が地味なことも私は気にしてない。
通っているのは公立の中でも一番偏差値が高い学校で、猛勉強をして入学した思い入れのある学校だった。
それに高校に合格した時、お母さんが喜んでくれた学校でもある。
きちんと卒業したい。
そう思っていた。
小高い場所にある井垣の家からは海が見えた。
眺めはいいけど、帰りは大変そうだ。
特にこの坂を上るのは。
私が自転車で困ることといえば、それくらいだった。
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