ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「はーい。今日は素晴らしい感じに盛れましたよー」
キッチンスタッフの白い制服を着た真珠は大きな海老が二匹ものっている天丼を小洒落た社食のカウンターに出した。
この会社で働いている大学の先輩、萩原佳苗がトレーにそれを取りながら言う。
「ごちゃごちゃ言ってないで早く出しなさいよ。
ってか、あんた、なんでうちの社食で働いてんのよ?」
なんか一流企業に就職してなかった? と言う佳苗の後ろにいた、ちょっと軽そうなイケメン、吉田が真珠に、
「君、佳苗ちゃんの大学の後輩なんだってね」
めっちゃ優秀じゃん、と言う。
「なんで会社やめちゃったの?」
はは、と真珠は笑い、
「ま~、いろいろありましてね」
と言いながら、次の人の天丼を手際悪く盛り付ける。