ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
「なにか……」

 真珠は周囲を見回す。

 ちょうどサメがこちらに向かってくるところだった。

 今、呼んだら来そうなの、あれぐらいなんだが……。

 桔平に腕をつかまれたまま、真珠は妄想の中で、手を叩いてサメを呼ぶ。

 サメがガラスを突き破ってやってきた。

 真珠の視線から、その妄想を読んだのか、抜群のタイミングで桔平が言ってくる。

「それだとお前も死ぬから」

「……ですよね」

 そもそもサメに食われる前に、海水入ってきて沈んじゃうよね。

 っていうか、このサメ、慣らしてるわけでもないから、手を叩いても来ないよな。

 来るのは、彼か彼女にとって、我々が美味しそうに見えたときだけだろう。

 桔平は真珠から手を離し、冷蔵庫からペットボトルの炭酸水と水を持ってきた。

「どっちがいい?」
「あ、じゃ、じゃあ、水で」

 炭酸水を飲む桔平を見ながら、

 飲み物飲んだら、落ち着いてくれないかな、と思う。

 ドバイは砂漠の国だが、ミネラルウォーターの産地でもあり、水道水も飲める。

 水は、まろやかで日本人好みの味だった。
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