マエノスベテ
15
「この件に関していえば委員会でもなんでも、仲間を作ろうというのは、仲間を選ぼうと言うことなんだという事例のひとつだよ。
やたらと友達を作りたがるやつは、友達を排除しているのが常なのさ」


 ぼくは、なんだか合点がいった。
この友人を排除しようと裏から画策するのは彼らだ。
彼のスタイルが昔気質で排他的な生活指導の目の敵なのだろう。
「それだけじゃない。少しばかりはきみのせいでもある」

「ぼくが?」

「知恵を貸すにしろ、勝手に借りられるにしろろくなことはない。
以前もきみがたよりにきただろ。その口だしを彼は見下されたと顔を真っ赤にして、未だに根にもってるんだ」

「あぁ……」


確かにそう言った思い出はぼくのなかにもまだ顕在していた。あの教員は、いかなる理由においても、女子、または年下、に先を越されるのが悔しくてならないらしい。
どうやら大昔に、チビで太っていたことを周りの女子からからかわれ、年下からも、仕事の出来でからかわれていたのも理由のひとつじゃないかと、いつだったかに別の教員が口にしていた。

「解決しようがしまいが、
『別の問題』が『蒸気機関車』になって突進してくるだけ。
この仕組みがわかっているから僕は、あまり関わりたくないんだがね……あのときもグチグチとずいぶんの間彼らは聞き苦しいことを言い出したものだ。ひいては、こっちの責任だ、と、発想を転換させてきたんだよ。だったらなぜ追及もしないで長い間無能を晒したのかと掘り下げられてたが」

そういう相手だとそのときのぼくはよく知りもしなかった。
しかし無自覚にしろ巻き込んだ一因は彼に関わろうとしたぼくにもあるということらしい。

「ぼくに、できることはするよ」
 この話題のおかげで気まずくなってしまったプリントをはたしてどうすべきか。
ちらりと彼の腕のなかを見る。

「遅いよ、もう時は動いている。それにきみだけじゃないからね。他のやつらよりはマシさ、僕の逆恨みを量産するだけでなにも挨拶はしないのだから」

 ひらひら、とその『紙』を振りながらの溜息。
輪の方から逃げていくというのは、手は出せないが顔は真っ赤だということなんだろうか。
特になにかせずとも、したとしても、彼はいつも独りだ。


2019/03/29 18:32




「僕に敵や味方はないね」


木の形をしていた粘土がぐにゃりと歪み、あっという間に、泥から沸き上がる腕の形になる。
2019/03/29 17:55










16
 どうにか話題を前向きにしようと頭を捻るがぐるぐると脳裏で巡る疑問が先に口をついて出た。
「確かにノートはいつも見せているけど、転んだかどうしてわかるんだ? それは二つ上の階の教室のことだ。目撃者も居なかった」

彼はじろりとぼくを見たあとで、制服のズボンの膝が汚れていることや、手首がわずかに擦りむけていること、それから……と髪に手を伸ばして、頭についていたらしい綿埃をとった。

「午前の授業のとき僕は下に居たんだけど。保健室で誰かが絆創膏をもらうのを見た。カーテン越しだから声だけだけどね」

「なんだ、そっちに居たのか」

 埃に気がついていなかったことなどとあわせてなんだか気恥ずかしい気もちになった。

「あの様子だと軽傷っぽかったけど、なにかボンヤリしてたのかな」

「委員会の件だよ。あと、しつこい好意から逃げていたんだ」

またか、と彼は楽しそうに笑った。

「ぼくは、好きな『相手』が居る。人間なんかにかまってられないんだ!」

生きている『人間』ではなく、もともとぼくは、『そうでない』相手に興味があるのに。
なぜか『あいつら』、ぼくに構おうとする。

「クラスメイトが泣くぞ」

唯一気の許せる仲だった彼は、とても愉快に言う。

「別にいいよ」

他人が大嫌いだ。
ただでさえ。
そして年を増すごとに嫌いになっていく。
 頭にあるこの『耳』の名残もケモミミとか言って世間が流行らせたおかげで、間接的とはいえ僕は世間の晒し者。

息苦しい学校生活をしなくちゃならないというのを、近所の作家に言いにいったことがある。彼は『それをネタにした本を発売』した。

 それからは酷いもので、周囲からは、まるで僕が難癖をつけた悪者のようになってしまっていた。

ケモミミくらいで!
とまで作家のファンが部屋のそばに嫌がらせに来たりしたのだ。
 生まれついての悩みまで「くらいで」とまで、言いに来られるきっかけになるような『物』に、当事者が救われることはないだろうし、
『コピペ作家なんか死ねばいいのに!』とぼくはよく口にしている。
2019/03/30 21:19
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