同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

　その証拠に、これまで幾度も耳にしてきた、とびきり優しい甘やかな声音で「バーカ」と口にした窪塚は、再び胸にぎゅうぎゅうと掻き抱いてくれている。

　気持ちが伝わったんだと安堵しかけたところに、耳元に顔を擦り寄せるように埋めた窪塚から、さっきの質問に対する返答がなされた。

「俺が鈴を苛めるのは、鈴が恥ずかしがったり、素直になったりするのが見たいだけであって、本当に苛めたい訳じゃねーよ。けど、俺のために、そこまで覚悟しようとしてくれたことがメチャクチャ嬉しくてどうしようもねーよ」

　今度は私が虚を突かれる番になっている。

　そう言ってくれた窪塚の言葉にも未だ半信半疑だ。

　私のことを気遣って自分の性癖を隠そうとしているように思えてならない。

　いつか齟齬が生じて、やがて亀裂となって、取り返しがつかなくなって離婚……考えただけでもぞっとする。

　ーーここはしっかりと話し合っておかなければ。

「けど、我を忘れるくらい苛めるのが愉しかったんじゃないの？」

　窪塚の胸を押しやり正面から窪塚の瞳をまっすぐ見据え、これからの未来のことを案じて放った私の質問に対して。

「ちげーよ。鈴が俺に遠慮して、なかなか素直に甘えてくんねーなら、甘えられるよう仕向けてるうちムキになって。そのうち、鈴があんまり可愛い反応ばっかするから止まらなくなっただけだから、安心しろって」

「ーーええ!?　そうだったの？」

「ああ。……けど、鈴が俺に苛めて欲しいって言うんなら、合わせてやってもいーけどな。どーする？」

　窪塚からの、これまた予想だにしていなかった言葉の数々に驚きを隠せないでいる私に、わざとらしく、黒い笑みを浮かべた窪塚の意地悪発言が投下された。

「バッカじゃないの？　そんなの甘えたいに決まってんでしょーがッ！」

　思わずムッとして、無意識に本音を吐露してしまった私は、やはりどうあがいても、どう転んだとしても、窪塚のゴッドハンドには敵わないらしい。