同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

 私の言葉を聞き入れるやいなや、窪塚は盛大にむくれた表情になってしまい、その様子に、私が雲行きの怪しさを察したときには時既に遅しで、両の肩をぎゅっと掴んできた窪塚によって、ベッドにとさっと押し倒された後だった。

 突如押し倒されたこの状況に思考が追いつけず、呆けている私の眼前に窪塚がずいっと端正な顔で鼻先すれすれの至近距離まで迫ってくる。

 そうして間髪入れずに、低い声音を苦しげに響かせた。

「鈴にとっては大したことない過去だったとしても、俺にとっては大したことなんだよ。特に、藤堂とは、キス止まりつってもキスは許したんだろ。しかもファーストキス。そんなの気になるに決まってんだろッ」

 その言葉で、付き合い始めた頃、話の成り行き上、藤堂とはキス止まりだったと言うことをついうっかり口にしてしまっていた事を思い出す羽目になったが。

 それだって、藤堂とのことを気にしてた窪塚のことを安心させようとしてのことだったのだ。

 ……なのだが、結果としてやぶ蛇となってしまっただけだった。

でも確かに、言われてみれば、そうかもしれない。

 何もかも、私の配慮のなさが招いたことには違いない。

 最近は、窪塚がそのことに触れなくなっていたから、もう気にしていないと思っていたけど、そうではなかったらしい。

「……じゃあ、圭はどうやったら機嫌直してくれるの? 圭の言うとおりで過去は変えられない。けど、こんなことで圭との時間を無駄になんかしたくない。なんでもするから機嫌直して。ねえ、圭、お願い」

そこまで気にしてくれるのは嬉しいことだけどーーこんなことで窪塚との貴重な時間を無駄にしたくない。

 そんな思いに囚われてしまった私は、なんとか機嫌を直してもらおうと、私のことを組み敷いている窪塚の下腹部へゆっくりと手を這わしつつ、そう言って窪塚に迫っていた。

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