秘密の多い私達。

夜話



「咲子何ぼさっとしてるの準備手伝わなきゃ終わらないよ」

 買い物を終えてパーティ会場に到着。無駄とは思いながら周囲を
キョロキョロと確認して入る。その部屋だけは食べ物の持ち込みが可能と
なっていて部屋は明るくてとにかく広い。
 カラオケ等の遊べる物もあって楽しめそうな雰囲気は十分にある。

 他の部屋ではそういうコトをする人もいる場所だなんて思えないくらい平和。

「あ。ごめん」
「紗季駄目だって。咲子に調味料もたせたらヤバイ」
「咲子はそこに座ってて。疲れてるでしょう?」
「え?何で?」
「あっぶな。ヤバイの忘れてた…」

 何故か食事の準備をさせてもらえなくて私は持ってきたお菓子を食べ
ながらメインの鍋が出来るのを待った。

 持ち寄っての闇鍋なのに関われないってどういうコト?

 テーブルには安いお酒と家から持ってきたつまみ。特に次郎君の家は
居酒屋だからボリュームも味も最高。
 こうして鍋を囲んでのパーティ。皆もちろん写真を撮る。

「……創真さんに送ろう」

 こんなの食べてって苦笑いされるんだろうけど。報告。

「さって。久しぶりにこの3人で飲み会しかもお泊りだから制限ナシ!
といっても次郎君。ドサクサに紛れて咲子に手だしたりしないでね」
「何だよそれ。そんなこそこそする必要もないだろ」
「おっとこれはもしや次郎君がやっと一歩前進するか」
「悪絡みするほど酔ってるのか?いいからお前が買ってきたたこ焼き食え」
「ドロドロでまずそう」
「鍋に入れたらそうなる」
「じゃあ私のコロッケで中和」
「するか!」

 1時間、2時間と家族の事を愚痴ったり飲んだりまた仕事を愚痴ったり。
結局学生の頃と変わらない時間の使い方をして笑っていた。
ただ冗談めかして話すことはあっても恋愛関係の話は誰もしない。

カラオケがあるから歌おうと散々言っていた紗季が泥酔してしまい
一番最初に寝てしまう。

 後は俺がするからと言われたけど、調理には参加できなかったから
せめて片付けはしないと。
私もある程度飲んではいるけど食事を優先したからそこまで酔ってない。

 次郎君は紗季よりも飲んだと思うけど全く酔ってないのは男子だから?
それとも仕事柄とか?

「紗季が心配だったけど元気そうで良かった」
「そうでもないぞ。一昨日も店に来て落ち込んでたから」
「そんな酷い別れ方だったんだ」
「まあ、……不倫だったらしいから。何ともな」
「え。そう、なんだ」

 普通に交際して別れたのかと思ったのに。不倫だなんて聞いてない。
 と、いうよりは人に簡単には言えないか。

「俺だから話してくれたわけじゃないよ。酔っ払ってぽろっと」
「……」
「紗季って親がずっと仲悪くて。温かい家庭ってやつに憧れてるから。
どうしても安定してそうな男に目が行くんだろうな」
「詳しいね」
「ちょっと付き合ってた時期あったから」
「そうだったの?知らなかった!言ってくれたらよかったのに」
「お前の家が大変な時だったから。金策に駆け回ってる時に俺ら付き合ってる
なんてそんな場違いなこと言えないよ」
「気を使ってもらってごめん」

 社会人になってからはたまに近況報告メールをするくらいだけど、
学生の頃の話なら何でも知ってるつもりだった。確かに家の借金で人の事なんて
構ってられないしそんな報告されても素直に喜べなかったかもしれない。

 だけど一言くらいあっても良いのにって思うのはワガママかな。

「友達としては最高に良いんだけど付き合うとちょっと違うってなって。
別れたんだけど、やっぱり気にはなるよな。あれで結構打たれ弱いから」
「今なら真剣に付き合えるかも」
「俺もそう思って聞いてみたら無理だって」
「まだその不倫相手を忘れられないんだ」
「いや。俺が咲子に未練あるからって。無くなったら考えてあげるってさ。
お前は何処から目線だよって話しだよな?笑って言うんだから」
「未練もなにも私達そんなんじゃ」

 付き合うなんて空気にも告白されそうな事も何もない。
 ただ一緒に遊んでいた友達。のつもりだった。

「そこだよ。近すぎて気づかれない寂しい時間を過ごした俺」
「……ごめん」

 違ったんだ。私、もしかしてめちゃくちゃ鈍感だった?
 家のことで必死だったのもあるかも知れないけど。

「別に。今は幸せそうだし。俺はそれでいいと思ってるよ」
「ありがとう。家のことも落ち着いたし仕事も得たし。大事な人も出来た」
「そっか。頑張れ」
「うん」

 片付けを終えて紗季を部屋のベッドに寝かせる。次郎君は隣の広い部屋の
ソファで眠るそうで。私は眠る前にシャワーを浴びさせてもらってから、
 使ってないカラオケルームへと移動。手にはスマホ。

『思ったより遅い時間にかけてきたね。今まで騒いでた?』
「片付けをしてたら遅くなって。それとシャワーを浴びたから」
『私はもうベッドに居るよ。君からの写真を見ていた所』

 もう寝たかな?と不安に思いながら電話をかけるとすぐ取って貰えた。
 やっぱり眠る前に声を聞きたい。安心出来る。

「凄く楽しかったです。案外ドロドロのたこ焼きも美味しいですね」
『それは、…良かったね』
「あの。ですね?私達って家柄も性格も見た目も何処にでもあるような子で。
ほんと普通の仲良しと思ってたんですけど。
やっぱりそれぞれ抱えているものってあるんですよね」
『……』
「私は鈍感だから。気づいてあげられないこと多かったのかなって。
創真さんの力があったら問題を回避したり救ってあげられたりするのかも」
『誰かを救えるなんて考えはただの思い上がりだから止めたほうが良い』
「貴方は私を救ってくれた」
『私はただ人の心を覗けるだけの金持ちってだけ』
「十分凄い」
『もう遅いから君もベッドに入って寝るんだ』
「はい。おやすみなさい」
『お休み』

 友達の内情を知ったからって結局どうすることもできないのだから。
下手に表情に出さないように、変に同情してると思われないように。
 何も聞いてない風にして私は笑ってることしか出来ない。



「おはよ咲子」
「あはは。すごい顔だよ。パンパン」
「それアンタもだからね」
「お前ら凄い顔」
「言うな!」
「言わないで!」

 あの頃より上手に嘘がつけるようになってる私は大人になったのかな。

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