秘密の多い私達。

その3


「うーーーん」
「まだ悩んでるんだね。君に解決は無理だ」 
「判断が早すぎます。大人なんだからもう少し余裕を持ってください」
「意味不明な反論」

 困ったような、でもくすっと笑って言われた。
 食後に少し歩こうと車を海岸沿いの駐車場に止める。

 ここまで来たからには海にもっと近づきたい。
 手をつないで海を眺めるなんてロマンがありますよね。

 と言ったら渋い顔で砂浜を歩くのは靴に砂が入るからNGと言われた。
ので沿いの道を歩く。砂浜を親子連れやカップルがそれは楽しそうに
 笑顔で仲良く賑わうのを尻目に。

 私が腕を組んで無駄に唸っていたせいもあるけど手も繋げてない。

「社長は自社で事件が起こったら気になりません?
明らかに悪意を持つ社員が居るって事なんだし。皆犯人探しで……
正直、風紀もあんまり良くはないです」
「社長だから何でも出来るわけじゃないよ。分かっている事は伝えたし、
警察にお任せしている。それ以上に出来る事は今は見つからないかな」
「毒で倒れるのが私だったとしても?」
「君だったら……か」
「もし貴方だったら私仕事辞めてでも犯人探すの必死になる。
推理モノは苦手だけど絶対犯人みつけて警察に突き出す」
「……」
「そう思うとやっぱり黙っていられなくて。あれこれ考え始めるとつい
熱中するんですよね……何も分からない癖に」

 何でも覚えている記憶力が羨ましい。私はもうあの場面を思い出すのも
怪しくなってきている。慌てていて一瞬だったのもあるけど。
 それでよく犯人見つけるなんて言えたものだ。

「君の熱意は理解してる。でも休日はもっと気を楽にしたほうが良い」
「あ」

 少し先を歩いていた社長が立ち止まって振り返った。
 そして私をじっと見つめてる。

「違うかな。咲子?」

 凄く真面目な顔だ。

「そうでしたね」

 小走りで距離を詰めるとその腕に絡む。

「思い出してもらえてよかった」
「忘れてた訳じゃないですよ。やだなぁ」
「そう?」
「もちろん。……忘れたい事もありますけどね」
「さて。そろそろ車に戻ろう。道に砂が増えてきた」
「夏は泳ぎに行きましょ。ここの海綺麗だし」
「暑いと分かっていて行くなんて冗談じゃない」
「もやしっ子おじさん……」
「何か」
「いいえ」

 手を繋いで車まで戻るときちんと砂を払ってから車に乗る。
もっと海を満喫したかったけれど、相手は潮風も好きじゃないらしい。
 来た道をゆっくりと戻り無事に帰宅する。


 買ってきたものを各々の収納場所に収めて。
 私の大事なお洋服はハンガーに掛けた。時計を見ると14時。

 無駄なく寄り道も少なめに帰って来たからまだ余裕がある。
 お風呂掃除だって出来てしまう時間。

 ということで。

 実家から持ってきた年季の入った短パンにTシャツ姿になりいざお掃除。
汗もかいたし終わったらシャワーを浴びようと着替えも準備しておく。

 社長さんはリビングで買ってきた本を熟読中。

 30分後。
 
「……だから。何度も同じことを言わせないで欲しいな。
私から言えることは全て話した。これ以上何を言えと?
え?協力?なぜ私が?……いい加減にしてもらおうか」

 掃除もシャワーも終えてリビングへ戻ってくると何やら険しい顔で電話中。
仕事関係だろうか?邪魔しないようにと思いつつも喉が乾いてしまったので
 冷蔵庫へ向かうには彼の側を通らないといけない。

「お疲れ様です……」

 私がリビングに入ると同時に電話は終了。
 バチっと視線が合ってしまって、一応反応する。

 




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