僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
*書庫の中
 僕の事前の調べによると、葵咲(きさき)ちゃんは最近、日本十進分類法でいうところの2類の資料――即ち歴史や地理関連の資料――を中心に閲覧しているようだ。

 ゼミと関わりがあるのかどうかは分からないが、今日もその分類の棚に来てくれるなら僕にとってこれほど好都合なことはない。

 何故ならニ類はこの図書館では一階に配架されているからだ。

 一階は日頃からあまり人気(ひとけ)のないフロアだ。かなりの高確率で二人っきりになれる。

 七階の事務室でカウンターを気にしつつ本の整理をしながら過ごしていたら、果たして人の入ってくる気配があった。ドアの隙間から覗き見れば、ビンゴ! それは僕の待ち人、葵咲ちゃんだった。
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