僕惚れ①『つべこべ言わずに僕に惚れろよ』
カフェ
 葵咲(きさき)ちゃんと書庫で会ってから今日で五日。僕は結局何のアクションも起こさないまま悶々(もんもん)とした日々を過ごしている。

 呼び出せばまた手を出してしまいそうで……なかなか気持ちに踏ん切りが付けられなかったのだ。

 本当に情けない。

 でも、そのせいで仕事もろくに手につかないし、いい加減覚悟を決めないといけないな、とも思う。

 お腹が鳴って、僕はまだお昼を食べていないことに気が付いた。事務所内の時計を見ると、そろそろ十三時半(いちじはん)になろうかという時間で。

 少し気分を変えようと、僕は学内の食堂上階にあるカフェに足を運ぶことにした。

「ちょっと出てくるから困ったことがあったらメールして」

 手にしたスマホを見せながら、カウンターにいるの女の子――篠原麻衣子さんという――に声をかける。
 当番が鈴木君じゃないのが少し不安だが、彼女も結構しっかりしている()だし、何かあったらカウンター内のパソコンからメールをくれるだろう。

 館内に二台ある書誌データが共有されているパソコンも、昨今の風潮でオンラインになっている。
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