【SR】卵

…3…





「ただいま」


と言ったって、返事が来るわけではない。

父は毎晩仕事で遅いし、母は習い事だの、友達と食事だので、ほとんど留守だ。

まあ、家にいて小言を言われるよりは、全然マシなんだけど。



リビングに行くと、久々に兄の姿があって驚いた。


「ただいま、お兄ちゃん」


兄はチラッと私を見たけど、何も声は発することはく、そのまま部屋に戻ってしまった。



昔は、優しい兄が大好きだった。

遊ぶ時も、近所の女の子たちとお人形さん遊びをするより、兄やその友達と泥んこになって外で駆け回ったり、ゲームをしたりする方が多かった。

高校受験に失敗し、父の期待した進学校には入れず、滑り止めだった学校に入学してから、家族との間に亀裂が出来た。

高校へは通い始めたものの、馴染むことが出来ず、その後は部屋からもあまり出なくなったんだ。



私の晩御飯は、たいてい祖母が作ってくれた。

三年前に建てた二世帯住宅には、一階部分に祖父母が住んでいる。

私が中学に上がったくらいから、父も母も家を空けるようになり、私は祖父母と夕食をとることが多くなっていた。





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