実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです



彼は、両親が別居した後は長くアメリカにいた。
20代半ばで帰国してからは、父親の系列会社を任されている。


勿論、夏子は自分の出生の事は知っている。
最初は田所の祖父母も父も内緒にするつもりだったらしい。
だが夏子は中学生の頃、自分の父が田所克行(たどころかつゆき)では無いと、いつの間にか知っていたのだ。

誰に真実を聞いたのか夏子は未だに明かしていないが、おそらく母の貴子だろう。


事実を知った当時は少々は荒れたが、夏子は強かだった。

何しろ、明石家はIT関連の会社を経営していて裕福だ。
タレントとしてデビューするのに明石家の力を利用したいと思ったのだろう。

半分血の繋がった兄とは時々会っていて、お小遣いも貰っているらしい。

夏子は高級なブランド品を幾つも持ち歩き、明石家のパーティーにも呼ばれている。


兄妹仲は良さそうには見えないが、兄と妹の血の繋がりは大事にされている様だ。



『今日来るなんて、聞いてない…。』

明石洸…真穂の一番苦手な男だ。


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