僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 ふと冷蔵庫の中身のことが気になって、それでもやっぱり外に出るのは何となく躊躇われて。

 私はリビングで洗濯物を畳んでくれている理人に声をかける。

「ね、理人(りひと)。今日は家でのんびりするよね?」

 窺うように理人を見たら、作業の手を止めて、立ち上がった。

「買い置きの食糧、大丈夫だっけ?」

 言いながら私のすぐそばまでやってくると、別に必要もないのに私の腰を抱くようにして、冷蔵庫の扉を開ける。

 冷蔵庫には卵やウインナーが、フードストッカーには缶詰やパスタなどが入っていた。
 お米も米櫃(こめびつ)の中に、半分以上あったはずだ。

「別に問題なさそうだね。今日は二人でのんびりしようか」

 言うなり、理人が私の首筋に顔を埋めるようにして甘えてくる。

「珈琲、いい匂いだね」

 言いながら、嗅いでいるのは私の髪の毛なのが理人らしくて、私はクスクス笑ってしまった。

 と、いきなり部屋の電気が落ちて、私はびっくりして天井を仰ぎ見る。

 さっきまで保温ランプが点っていたはずのコーヒーメーカーも、オレンジのランプが暗くなっているから、どうやら停電してしまったみたい?
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