僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 ()いで私の耳に唇を近づけると、そう言ってきて――。

(私が、理人(りひと)の服を……脱がせる?)

 考えただけでドキドキと心臓がうるさいくらいに飛び跳ねた。

 どうしたらいいのか分からなくて、救いを求めるように彼を見つめる。

「ほら、(すそ)に手をかけて上に上げていくだけだよ」

 私の手を取って、自分が着ているサマーニットの裾に導く。

 私は促されるままにおずおずと彼の服をまくり始める。

 手が、理人の引き締まった腹筋に触れて、自分とは違うその感触に、彼は男なんだと改めて実感させられる。

 何だかすごく照れ臭い。

 途中まで彼の服をまくったところで、どうあっても身長差がありすぎて、脱がせるのは無理だと訴えようとしたら、理人が私の前にひざ立ちになった。

「これで、やりやすい?」

 私の顔を下から見上げるようにしながら、問いかける。

 私は、彼から見上げられることにどうしても慣れていないから、物凄く緊張してしまう。

 それで、彼の視線を遮断するように、服を持ち上げた。理人はその動きに、バンザイをして脱がしやすいようにしてくれる。

 だからかな。案外簡単に彼の上半身を裸にすることが出来てしまった。


「――お風呂、行こうか」

 その言葉と同時に、私は理人(りひと)に突然膝裏(ひざうら)をすくい上げられて、お姫様抱っこをされてしまう。

 あられのない自分たちの裸身がうっすらとガラスに映るのを見て、今更のように凄く恥ずかしくなる。

 私は理人の首にギュッとすがりつくと、それを見ないようにした。
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